クレームへの「嫌がらせ」がはじまり?ポテトチップス誕生の裏側

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クレームへの「嫌がらせ」がはじまり?ポテトチップス誕生の裏側
世界中で親しまれているポテトチップスは、19世紀半ばのアメリカ・ニューヨーク州の高級リゾート地、サラトガ・スプリングズで生まれたと言われています。

当時、この地域の一流ホテルが経営するレストランでは、ヨーロッパ風の分厚いフライドポテトが高級料理として提供されていました。現在のフレンチフライに比べると、もっとゴロッとした厚みのあるスタイルが主流でした。

厨房での衝突と、極薄スライスの誕生

クレームへの「嫌がらせ」がはじまり?ポテトチップス誕生の裏側
ある日のディナータイム、ひとりの気難しい客が「フライドポテトが厚すぎる。もっと薄くしてくれ」と、何度も厨房へ料理を突き返しました。

当時のシェフであったジョージ・クラムは、この度重なるクレームにすっかり機嫌を損ねてしまいます。そこで彼は、「これだけ薄ければ、フォークで刺すこともできまい。参ったか」という腹いせのつもりで、ジャガイモを紙のように極限まで薄くスライスし、油でカリカリに揚げて大量の塩を振って客のテーブルへ出しました。

シェフとしては客を困らせるつもりの一皿でしたが、結果はその狙いから大きく外れます。その客は薄いポテトを口にして大絶賛し、周囲の客たちも次々と注文を始めました。これが、のちに「サラトガ・チップス」と呼ばれる、世界初のポテトチップスが世に広まるきっかけとなりました。

このエピソードの「信憑性」をめぐる諸説

この誕生秘話は非常に有名で、ポテトチップスのルーツとして広く語り継がれていますが、食品史の研究者の間ではいくつかの疑問も指摘されています。

クレームへの「嫌がらせ」がはじまり?ポテトチップス誕生の裏側
たとえば、ジョージ・クラムが店を出すずっと前の1817年に出版されたイギリスの料理本には、すでに「ジャガイモを紙のように薄くスライスして揚げる」というレシピが掲載されていました。そのため、クラムが世界で初めてこの調理法を「発明」したわけではなく、当時すでに一部で知られていた製法を、リゾート地の高級レストランで独自のスタイルとしてヒットさせたのではないか、とも言われています。

また、店を繁盛させるために、のちの観光PRの一環としてこの劇的なエピソードが誇張されて広まったという見方もあります。

レストランの一品から、持ち歩けるおやつへ

当時はまだ高級レストランの一皿にすぎなかった薄切りポテトですが、これが現代のように「袋入りのスナック菓子」として大量生産されるようになるには、さらに数十年を待つことになります。

1920年代にアメリカで防湿性の高い紙袋が開発されたことや、のちに自動で大量にスライス・フライする工業技術が確立されたことで、ようやく私たちはいつでもどこでもポテトチップスを楽しめるようになりました。

19世紀半ばのレストランでの思わぬ衝突から芽生えたアイデアは、時代を経て技術と結びつき、世界中の定番のおやつへと進化していきました。私たちが何気なくあの袋を開けるとき、その歴史の道のりを少しだけ思い出してみるのも面白いかもしれません。